スコットランドで飲んだ一杯のりんご酒。それこそがヨーロッパで親しまれているサイダー(シードル)でした。
口に含むと林檎の香りが優しく広がり、お酒が苦手でも飲みやすい。そして、どれも林檎を原料としているのに、国や地域、生産方法によって1本1本それぞれに異なる個性がある。そんな魅力を多くの方に知っていただけるよう、JR各線「神田駅」からすぐの場所にオープンしたのが、「Bar&Sidreria Eclipse first(バー&シードレリア エクリプス ファースト)」です。
開店当初はまだまだ知られていない印象でしたが、最近ではシードルを求めてご来店くださる方が増えてきました。少しずつ普及している様子を、とても嬉しく感じています。
あなたもぜひ、シードルの世界へ。飲み方に、決まりはありません。いろいろとご提案しながら、お好きな1杯に出会うお手伝いをさせていただければ幸いです。
シードルは、林檎果汁を発酵させて作られる醸造酒です。1本のシードルを作るために、国産のものでは平均5~6個の林檎が使われています。
シュワっと爽快な泡が立つスパークリングタイプが一般的に広く知られていますが、それだけではありません。非発泡性のスティルタイプや凍らせた林檎で造るアイスシードルもあり、泡が苦手な方も飲みやすいお酒です。
アルコール度数は低めでのみやすく、そのなかでも2~9%と幅もあるので、様々な飲み口を楽しめます。優しい飲み口のものが多く、お酒を飲み慣れていない方にもおすすめです。
海外では、ビールやワインと同じように、シードルが親しまれています。かつては水の変わりに飲んでいた国もあるほどで、現在は世界で1,000種類を超えるシードルが造られています。
日本では「シードル」ですが国によって呼び方が違うのがシードルの面白いところでもあります。各国のシードルを飲むときにラベルを見るのも楽しみになります。
甘いお酒が苦手だから、シードルも苦手。こんなイメージがある方もいらっしゃいますが、辛口の銘柄もあるんです。キリっと爽快なテイストは、初めの1杯にぴったり。味わいの幅が広いのも、シードルの魅力のひとつです。
キレのあるドライなスパークリングタイプのシードルは、黄金色でシュワシュワと炭酸が昇り、私たちに馴染みのあるビールとよく似た特徴を持っています。一方で、ワインの様に渋みやコクを感じられる非発泡性のシードルもたくさんあります。まさにワインとビールのいいとこどりをしていると、国内でも近年注目を浴びています。
2タウンズサイダーハウス(アメリカ)
3人の創業者が2つの町の出身ということから付けれた社名が「2タウンズサイダーハウス」です。2010年に小さなガレージから始めたハードサイダー造りが、今やアメリカ西海岸において最大の生産量を誇るビッグカンパニーに成長したと言われています。
アウトサイダーはフレッシュなハードサイダーを無濾過でボトリングした実にジューシーな味わいの商品。生産者のデーブ・タクシュ氏とネルス氏が当店へ来店してくれたのは2016年頃だったかと思います。その時、ボトルのラベルを指し、「OutSider(枠にはまらない者)とCiderがかかってるんだぞ!」といたずらっ子の様な無邪気な笑顔で教えてくれたが印象的でした。日本には、彼らの商品の一部しか輸入されていませんが、彼らが作るハードサイダーはバリエーションに富んでいると思います。そんな彼らの商品をいつでも飲めたらどんなに楽しいか。
ヴァンヴィ・シードル(日本)
2016年、ドイツ・フランクフルトで開催された国際シードルメッセに参加しました。その前夜のシードルアワード受賞式の会場で出会ったのが、醸造家の竹村剛氏でした。それ以降、竹村氏へのシードル造りへの探求心に惚れ、お互い情報交換し、交流を深めていきました。
2018年2月には共にフランス・ノルマンディの農業学校の特別プログラムを受講し、シードル、カルヴァドス、ポモーなどその技術や製法を学びました。竹村氏は、私が最も信頼する国産シードルの生産者の一人です。その竹村氏が、地元りんご農家とともに、自社農園、自社醸造を目標に掲げクラウドを募り、新たに新会社を立ち上げたのが「VinVie WINERY & CIDERY」です。ヴァンヴィ・シードルは、フランスの伝統的なシャンパーニュ製法に倣い、時をかけ造られた竹村氏の渾身作といえる一本です。原料の良さを引き出し、それを存分に活かす醸造家の技術力あってのシードル。心地良いフレッシュなリンゴの香り、透き通る清涼感、きめ細かな泡立ちは、決して高級なシャンパンにも劣らないと思います。
マノワール・アプルヴァル(フランス)
マノワール・アプルヴァルはフランス・ノルマンディ地方のドゥービルとオンフルールの間に位置しています。醸造所のある丘からはイギリスとの間の海峡を望むことができ、オーナーのアガーテ・レタリー女史は、醸造所をたずねた私に優しく施設を案内してくれました。その翌年、さらにその翌年と2年連続で日本を訪れたアガーテさんは、必ず当店に立ち寄ってくれます。
当店のシードル愛好家の皆と、アガーテさんを囲んで、アプルヴァルを飲んだのは良い思い出です。フランスシードル特有の素朴な香りと、さらに開くとアプリコットや熟したパイナップルを思わせる優しい味わいが感じられ、一緒に合わせるのは同じくノルマンディの名産であるカマンベールチーズや、ポン・レヴェックなど、とても相性が良いのが魅力です。アガーテさんの優しい性格が表れている様な可愛らしいラベルは、ノルマンディの伝統建築、メゾン・コロンバージュを模しており、白壁に木組みが浮き出たノルマンディ・ブブロン村の可愛らしい街並みを思いださせてくれます。
マヤドール・シドラ・ナチュレ(スペイン・アストゥリアス)
ボトルを頭上より高く掲げ、もう片方の手で低い位置に構えたグラスに大胆に注ぐ独特の注ぎ方をエスカンシアールと言い、プロの注ぎ手をエスカンシアドールと呼びます。この独特の方法で注がれるのが、スペイン・アストゥリアス地方の伝統製法で造られるシドラ(シードル)です。独特なのは注ぎ方だけではなく、ヴィネガーの様に強い酸味もその特徴。初めて飲む人は、多くがその酸っぱさに驚くが、これが慣れるとクセになりますし、食事との相性も抜群です。
私は2017年、2018年と2年連続でアストゥリアス、マヤドールの醸造所を訪ねました。6000以上もあるという大きな樽から直接シドラを飲ませてもらったこと、シドレリアと呼ばれるシドラ専門のレストランでエスカンシアドールのチャンピオンに指導してもらったこと、地域のシドラの祭りに参加し、地域の人々と夜更けまで飲んだり歌ったりしたことは決して忘れることのない思い出です。
ワンス・アポンナ・ツリー プットリーゴールド(イギリス)
2018年9月、イギリスのサイダーの産地であるヘレフォード・レドベリーを訪ねました。迎えてくれたワンス・アポンナ・ツリーの生産者、サリーブースさんとは2017年に当店に来店いただいてから1年ぶりの再会でした。運よくその日、ワンス・アポンナ・ツリーの果樹園「ドラゴンオーチャード」は、その年初の収穫の日でした。日本では見かけることの出来ない、サイダー用りんごの収穫風景は圧巻で、揺さぶった木から滝の様に落ちる様子と、地面に転がったカラフルなリンゴに思わず見惚れてしまいました。
プットリーゴールドは完熟のダビネット種を使った華やかでフルーティながら切れ味もある無発泡タイプのサイダーです。イギリスの大手有名ブランドのサイダーとは一味違う、こだわりのサイダーだと思います。
当店ではシードルを使ったカクテルもご用意しています。特に季節のフレッシュフルーツを使ったカクテルは大変人気があります。旬のフルーツを使うので季節に合わせてお楽しみいただけます。他にもお好みに合わせてお作りすることもできますので気軽にお声がけください。
シードルの仲間もご用意しています。りんごで作るブランデー「カルヴァドス」やりんご果汁とカルヴァドスを合わせて熟成させた「ポモー」などシードルの仲間たちも当店ではお楽しみいただけます。